解離性障害(解離性同一性障害・離人感など)


【解離性障害とは】

通常ではまとまっている自己:思考・記憶・感情・行動などがバラバラになっている状態を指します。

 

米国精神医学会出版『DSM-5(精神疾患の分類と診断の手引き)』では解離症群/解離性障害群としてひとつの障害群として独立しており、以下は下位分類です。

 

◆解離性同一症/解離性同一性障害

◆解離性健忘

◆離人感・現実感消失症/離人感・現実感消失障害

◆他の特定される解離症/他の特定される解離性障害

◆特定不能の解離症/特定不能の解離性障害

 

解離自体は動物の身体に備わった機能の一つで、危険な状態に陥ったときに、苦痛を最小限に抑えるために発揮される能力です。自然界では、草食動物が肉食動物に捕まる時、痛みを感じないのだそうです。解離を起こし、噛まれる痛み、食べられる恐怖を感じないようになるそうです。難を逃れると、身を震わせて解離状態を解き、またそれまでの生活に戻っていくことができるといいます。

 

人間もこの機能があり、激しい苦痛や耐えがたい恐怖に襲われた時、体から感覚を切り離し感じないようになります。交通事故などで、直後は痛みがなく大丈夫だと思っていたらあとからあちこちが痛み出して打撲や骨折をしていることがわかった、という話は聞いたことがあるのではないでしょうか。

 

ところがこの切り替えがうまく出来なくなり、社会生活(社会的・職業的・他の重要な領域における機能)に支障を来たすまでになると〝解離性障害”という病気と判断されます。

 


【症状】

具体的には次のような症状がみられます。 

 

◆記憶が曖昧になる又は思い出せない
◆自分の体じゃないようなふわふわした感じがする

◆現実感がない

◆自分を客観的に又は後部上方から見ている自分がいる(離人感)

◆自分の中に他に何人か別人格がいる(らしい)

◆自分を罵倒する人格が自分の頭の中にいる

◆気付くと自傷行為をした傷痕があるが傷をつけた記憶がない

◆時間の流れを感じられない

◆まとまった時間の感覚がない

◆楽しいことをしている筈なのに楽しいと感じられない

◆ストレスがかかっていることを感じられない

◆大きなストレスがかかると意識が飛んでしまう

 

後述しますが解離性障害の方は、実はものすごくもともとの能力とエネルギーが高い方が多いのでそれが出来てしまうのですが、解離が解けていないとその成功の喜びも実感することができず、「こんなにやってもダメだった…(感じられなかった)」と、徒労感にぐったりしてしまう結果になってしまうのです。そしてまた次のチャレンジをするのですが、その繰り返しに段々と気力も奪われていってしまいます。

 


【原因】

 

原因は強いストレスやトラウマ体験だと言われています。事件や事故・災害に巻き込まれ命の危険にさらされた、虐待(暴力など身体的虐待・暴言など精神的虐待・養育放棄などのネグレクト・性的虐待)やいじめを受けた、レイプされた、また親や兄弟など近い関係の方のそうした体験を見たり聞いたりしてしまった…。このような経験がトラウマとなって心身に影響を及ぼします。

 

あまりに過酷な経験であるため、普通に振舞い生活するのが困難になります。そのため身体は記憶を曖昧にしたり思い出さないように封じ込めたりして何とか生活していける様にするのです。そうまでして身体は自分を守ろうとしてきたということです。なんと健気な症状でしょうか。

 


【解離性障害になりやすい人の特徴】

 

こちらはこれまで解離性障害の方とお目にかかりお話を伺ってきて私が感じたことなので私見になりますが、以下のような傾向が見られます。

 

◆エネルギーが高い

◆能力が高い

◆感受性が高い(アンテナの性能がいい)

◆しっかりとした世界観と信念を持っている

◆妥協は苦手(好まない・したくない・できない)

◆状況把握能力が高い

◆意志が強い

◆完璧主義

◆頭の回転が速く結論を出すのが早い

◆優しい

◆全ての生き物に対し平等な愛がある

◆相手に対しての思いやりがある

◆相手の意見を聞きその通りにしてあげようとする

 

また、性格傾向ではありませんが、ここに書かせていただいたこととご本人やご家族など身近な方々は全く反対のイメージを持っていらっしゃる場合が多いというのも特徴と言えるかもしれません。

 

たぶんどちらかというと

◇精神的に弱い人

◇体力のない人

◇言ってることとやってることに一貫性がない人

◇中途半端な人

◇いつ爆発するかわからない怖い人

◇相手の気持ちを考えられない人

ダメな人

◇自分がない人

 

という風にみられてしまっていますし、ご自分でもそう思い込んでいます。なぜこんなにも違うイメージで受け取られているのか、ほんの一例ですが書かせていただきますね。

 

解離性同一性障害は別人格さんがいらっしゃる状態ですが、複数の人格を運営維持するのには相当なエネルギーが必要なので、高いエネルギーを持っていないと成り立ちません。実際体の中では相当なエネルギーを消費していますので、いつもぐったり疲れてしまっています。でも見た目にはそんなに疲れることをしてないので、普通の人がさらっとやっていることもできないなんて、なんて体力がない人なのだろう…と見られてしまうのです。

 

本当の姿は◇ではなく◆の方なのです。

 


【対応】

 

直接のきっかけとなった事実はもう過去のものなのか、今でも続いているのか、それによって対応は変わってきます。どちらにせよどこからか取り掛からないと身体はいつまでも緊張状態のままです。疲労もたまる一方で、徐々に身体が動かなくなっていってしまいます。そうなりつつあることを感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。何かを変えたいのにどこから手を付けていいかわからず困ったら、どうぞご相談ください。現在の症状、環境、人間関係など総合的にお話をうかがい、お一人お一人に合った対応策をご一緒に考えていきます。

 

まず、心身の危険が今も続いているならそれに対応することが先決です。まだ渦中にあるなら、解離は心身のバランスを保つために必要なので、治療してしまうほうが危険な場合があるからです。

 

安全が確保されたら、身体に溜まった疲れを取るための休養をしっかり取りながら、バラバラになっている記憶や感覚をつないでいきます。ここではトラウマ療法である「FAP療法」を使います。

 

FAP療法については   

→ こちら

 

少しずつ心身にゆとりが出てこられたら、『周囲へのご自身の反応』を見直してみます。頑張りすぎたり相手に合わせすぎたりという行動をしてしまっていることがあるからです。そういう状態はトラウマをより深めたり、新たなトラウマになりますので、行動や思考のクセを修正します。

 

また、自分の感覚を切り離してきたため、『自分の気持ち』をずっと遠ざけてきています。『自分の気持ち』を感じられないと『生きている実感』が得られません。私たち人間にとってこの「生きている感覚」が実はとても重要です。この感覚を得るために刺激を求めてしまうこともあります。他の人には真似できないこと、周囲から「すごいね!」と言われることをしようとすることも多く、無理をして体が悲鳴を上げてしまうこともあります。

 

『自分の気持ちを感じる』こと、そしてその『自分の気持ち』を大切にするということも練習して身につけていきます。

 

『自分の気持ちを大切にする』というのは、人との関わりにおいて自分の意見をきちんと伝えたり、上下を作らないようにしたり、やりたいことをやったり、といったことがそれにあたります。そして自分にとっても相手にとっても心地いい関係づくりを目指します。

 

トラウマ体験というのはきちんとケアすることで、そこを乗り越えてきた自分に『自信』と『力』を感じられる様になり、それがこれからのご自身を支えるひとつになっていってくれます。そうなれば、カウンセリングは終了です!

 

あなたの人生をトラウマに縛られたものではなく、トラウマ経験を力に変え、あなたらしさを取り戻して歩んでいっていただきたいと思います。